2004年08月24日

菜の花に泣かされた…私の負けだ

大河ドラマ「新選組!」は一つの山場。試衛館時代からの仲間であり、総長という要職にあった山南さんの切腹です。史実は事前に知っていましたが、やはり死んでほしくない。ドラマなんだからどうにか生きながらえさせてほしい。私のみならず、多くの視聴者がそう感じていたようです。しかし、それほどの惜しい人材だからこそ、その死が新選組というドラマを名作にしてくれるのかもしれません。

山南さんは頭が良すぎたのか、それだけに自分をさらけ出せない。新選組内で徐々に感じていた無常感・孤立感が、葛山の切腹や伊東の登場で決定的となりましたが、そのような葛藤を打ち明けられる人間が局内にいなかったのが残念。土方は土方で素直になれなかった。沖田の言うとおり、休ませてあげれば良かったのにと思いましたが、片時も曲を離れてほしくないという思いが、山南の申し出を拒絶させたんでしょう。対立した局面が多かったですが、もっとも山南の価値を認めていたのは間違いなく土方。それだけに、松原たちの嘆願に対して「うっせーんだよ!」とはねつける叫びのなかに、旧来の仲間を助けてやりたい本音を押し殺し、あくまで規律に厳粛な鬼の姿を通さねばならない土方の切なさが感じられました。

今回のMVPはなんといっても明里でしょう。孤独な山南さんが唯一心許せる存在だった明里。空気の読めないアホな存在かと思いきや、山南によけいな未練を残させまいと気遣って芝居していたとは。格子越しに菜の花を渡すシーンから、涙が止まりませんでした。でも、ほんのわずかな期間だったけど、時間を共有できて良かったですね。それがせめてもの救いでしょうか。

あとは伊東先生。切腹を見守るシーンでは唯一とまどいを隠しきれない表情でした。「こいつら本気で切腹させるのかよ」と、内心なめてかかった相手の規律の厳しさに唖然としたようですね。最後の歌を詠むシーンは、確かに空気が読めてないなと思いました。が、近藤に怒鳴られた後の表情が別の意味で切なさを表していましたね。山南に対する思い入れの深さこそ違えども、人の死を悼む気持ちに代わりはない。それなのにわかってくれなかったのか。そういうやるせなさを感じました。伊東は、新選組を自信の野望達成の踏み台と考える悪役として描かれるようですが、この表情を見る限りではそんな悪い人間ではないのかもと感じましたね。

三谷幸喜脚本と言うことで、当初より不安視された向きのある「新選組!」。近藤勇が坂本龍馬や桂小五郎と旧知の仲であるという設定などが、あまりに話をねつ造しすぎではないかという批判が多く、視聴率も初回を覗いては低迷。クライマックスである池田屋事件でさえそれほど数字を稼げなかったことで、世間的な評判は今ひとつのようです。

しかし、自分も含め、見る人はかなり熱心に見ているのではないでしょうか。絶対数は少ないが、はまり具合は強烈というコアなファンが多いということです。これまでの新選組像と違って、等身大の若者たちを描くスタンス。俳優も劇団出身者が多く起用されていて、なじみのある人が少ないくらい。しかし、無名だったが実力派の俳優陣が、特徴あるキャラクターを演じることで壮大な群像劇を見事に成立させている。近年の大河と異なり、かなり良質な作品と感じています。

来週は若干ソフトな話のようですが、今後は破滅への道を歩み、今回以上の悲劇を迎えることになりそうです。多摩編での純朴な時代を覚えている分、毎週観るたびに切なさが募ると思います。それでも最後まで見続けていきたい。そう感じるドラマです。

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